やっと春らしく晴れた日の「あくちぃ」にて

わたしはここに立っていた

ドアを二枚隔てた向こうはグリーン車

わざわざ移ってくる人もいまい

だから

ドアの下には荷物を置いて ガラスに背中をもたれかけて 

本など読んで

数十分

コツン

ノブが下がった

あ 誰か ここ 通る・・・カバンどけなきゃ・・・・

うわあっ、ムチムチした車掌さんだっ!

・・・そう、車掌が なぜだか こちらに 訪れたのだった・・・・

目を細めた車掌さん

すみませんね と 素手の片手を差し出しながら

わたしの脇を

すりぬける

こんなとき じつは ちょっと 嬉しい

ドアをふさいでいたのは わたしなのに

車掌さんは すまなそうに 会釈してくれる

から

それにしても近くで見ると大きな身体の車掌

ブロンズ像の昼下がり

権威ある制服のその奥に

どっしりとした重さを感じさせる

肉!

制服と肉体との関係性においてこんなにぴっちりとしたバランスでも可とするのは

今となってはJR東日本だけ

か・・・・

採寸のときより明らかに肉を身につけたのかしら

足もそれなりにむちむちしてるけど

なにより 背中のあたりがタイトで素晴らしい

ジャケットのすそが 大いに上がって華やかな尻尾のようだ

素晴らしい

それでいて 車掌は軽やか

びょん!

天井まで軽く跳ね上がり 

何か 天井のレバーを下げてまわっている

おそらくそれはエアコンのレバー

びょん!

彼がジャンプするたびに 涼やかな風が車内をかけめぐった

涼風を運んできた車掌の妖精はちょっとだけメタボの予感をその制服にかくして

このところ 引きこもりがちで 駅員さんに会えなかったわたしには

素晴らしい春の贈り物と

なりました

別居計画は・・・・けっきょくすぐに引き戻されてしまいました。いい大人のくせに、ただの家出だったのか?とほほのほ。

家族という概念が好きじゃないなあという気持ちは強まり、”家族”になりたくない、ただ人と人として関係を持ちたい、固定した関係性ではなく日々動き続ける生き物としての関係性を持ちたい・・・・・などと抽象的なことを言ってこまらせてしまいます。

わたしは誰とも家族にはなりたくないなあ。

やさしいだけ?